農水大臣の辞任に2週間は遅すぎる|安倍政権なら当日か翌日だった【岸博幸】
辞任まで2週間、問われるのは官邸の対応|岸 博幸
動画2026.10.17
辞任まで2週間、問われるのは官邸の対応
発言そのものより、遅さが信頼を削る。
簗前農水大臣がようやく辞任しました。問題発言も、有権者をバスで送り迎えした行動も、支持者への日当も、いずれも論外です。しかし、それ以上に問題だと考えているのは、辞任までに2週間もかかった総理官邸の対応です。第二次安倍政権の前例と比べながら、その意味を考えます。
本動画のポイント
- 簗前農水大臣の発言と行動は論外ですが、より問題なのは辞任までに時間がかかりすぎたことです。
- 原因は、総理官邸が前例踏襲の官僚的な対応を繰り返したことにあります。
- 高市政権はいま、消費税減税、安保関連三文書の改定、議員定数削減という重い課題を抱えています。
- これらを進めるには国民の信頼が不可欠で、短い動画で支持が決まる時代ならなおさらです。
- 第二次安倍政権では、問題発言をした閣僚は当日または翌日に辞任していました。
- 新しい農水大臣に武部新氏が就任したことは、改善に向けた良い兆しだと受け止めています。
01簗前農水大臣の辞任と、その問題行動
簗前農水大臣がようやく辞任しました。これまでに明らかになっている発言、有権者をバスで送り迎えしたという行動、電話かけをした支持者に日当を払ったこと。いずれも論外で、強い憤りを覚えます。
ただ、それ以上に腹立たしいと感じているのは、辞任に至るまでに時間がかかりすぎたことです。その原因は総理官邸にあります。こうした大臣の問題が起きたとき、総理が一人で決めるということはありえず、官邸がチームとして対応します。その対応が遅かった。しかも、非常に官僚的な対応だったのではないか。この点が残念でなりません。
02高市政権が抱える課題と、国民の信頼
そもそも高市政権は、これから本当に重要な政策課題を決め、実現しなければならない局面にいます。消費税減税、安保関連三文書の改定、議員定数削減。どれも国論を二分するような大きな課題ばかりです。
こうした課題に対処し、ある程度の成果を出すためには、国民の政権への信頼が非常に重要になります。しかも、いまは残念ながら、ネット上の短い動画で国民が政権や政党への支持を決めてしまう時代です。個別の政策だけでなく、政権全体として信頼を勝ち得なければなりません。
その意味で言えば、バスでの送り迎えといった行動以前に、最初に明らかになった発言だけで論外でした。あの発言だけで、政権や自民党への信頼は揺らぎます。これだけ大事な課題に取り組まなければならないなかで、本来はあの問題発言が出た時点で、早く辞めてもらう必要があったのです。
03前例踏襲の対応で、2週間が過ぎた
ところが総理官邸の対応を見ていると、まず政治家本人に説明責任を果たさせる、有権者のバスの送り迎えについても違法性が明確になったら対応する、といった表現が並びました。非常に前例踏襲的で、役人的な対応です。
これを繰り返した結果、最初の問題発言が明らかになってから辞任までに2週間もかかりました。その間、国民は動画でその内容を目にしていたはずです。「この政権は何なんだ」と感じた人もいたかもしれません。早く対応しなければならなかったのに、前例踏襲の官僚的な対応ばかりで時間がかかり、遅きに失してしまいました。
早く対応しないといけなかったのに、遅きに失してしまった。
04第二次安倍政権では、当日と翌日だった
これがいかに問題かは、比較の対象を出すと分かりやすくなります。
7年8ヶ月続いた第二次安倍政権では、2人の閣僚が問題発言をして辞任しています。いずれも東日本大震災に関わる発言でした。では官邸はどう対応したか。一人は問題発言をしたその日のうちに辞任し、もう一人は翌日に辞任しています。
重要な政策課題に取り組むなかで、問題発言によって政権の信頼が揺らいではいけない。だからこそ、すぐに辞めてもらったわけです。これと比較すれば、今回の2週間がいかに長すぎたかが分かると思います。その意味で、今回の総理官邸の対応は非常に残念であり、正直に言って腹立たしいと感じています。
05新しい農水大臣・武部新氏という救い
ただ、逆に救いだと感じているのは、新しい農水大臣に武部新氏が就任したことです。
私は彼をお父さんの秘書時代からよく存じ上げていますが、農水省の行政に通じているだけでなく、人格的にも非常に立派な人物です。そういう人をきちんと閣僚に据えたことは、しっかり改善しようということの表れなのだろうと受け止めています。その意味では、良い兆しです。
06緊張感を持って、重要課題に取り組んでほしい
これをきっかけに、高市政権と総理官邸は全体として気を引き締め直し、緊張感を持って、あらゆる面で国民の信頼を失わないよう努めてほしいと思います。
そのうえで、消費税の減税、安保関連三文書の改定、議員定数削減といった重要課題に取り組んでいってほしい。そう願っています。
※内容は動画収録時点(2026年10月)の情報と説明に基づく見解です。最新の情報は政府・各党などが公表する内容をご確認ください。
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岸 博幸慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授/経済評論家・コメンテーター