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AI規制が米中でまとまらない、2つの理由

AI規制が米中でまとまらない、2つの理由|岸 博幸

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動画2026.09.26

守ろうとしているものが、そもそも違う。

AI規制が米中でまとまらない、2つの理由

守ろうとしているものが、そもそも違う。

9月24日の米中首脳会談では、本来もっとも注目されるべき論点の一つがAIに関する規制でした。しかし成果はゼロでした。ほとんど報道されていない2つの論点、すなわち米中で規制の観点がまったく違うこと、そして核開発をめぐる米ソの協調とは本質的に違うことから、AI規制の行方を読み解きます。

本動画のポイント

  1. AIの進化は凄まじく、悪い方向に使われた場合のリスクも大きいため、グローバルな規制やガイドラインが不可欠です。
  2. トランプ大統領がAI規制に反対する理由は、株価や景気への悪影響を懸念する近視眼的なものだと言われています。
  3. 西側がAIから守ろうとしている対象は「社会」ですが、中国が守ろうとしているのは「共産党の支配体制」です。
  4. AIは開発段階の教育で、どの価値観をベースに世界を解釈するかが決まります。
  5. 中国にとってAIの輸出は、市場の拡大に加えて「価値観の輸出」にもなります。
  6. AIの開発を担うのは民間企業であり、シリコンバレーの企業も国益より自社の利益を優先しかねません。

01米中首脳会談と、AI規制という論点

9月24日に米中首脳会談が行われました。世界中が注目するなか、アメリカでの報道は歓迎の様子やディナーの様子ばかりでした。裏を返せば、政策面での成果はそれだけ乏しかったということです。

そのなかで、本来もっとも注目されていた論点の一つがAIに関する規制でした。ここ最近のAIの進化のペースは凄まじく、私のような世代は使い方についていけないほど、新しい機能が次々と入ってきます。当然、AIが悪い方向に活用された場合のリスクも大きくなっています。とくにAIエージェントが自律的に動いて悪いことをする可能性もある以上、規制やガイドラインは不可欠で、しかもグローバルに取り組む必要があります。

しかし、今回の成果はゼロでした。もともとトランプ大統領はAIへの規制に反対しています。アメリカで情報を集めると、その理由は、いま規制の議論をするとAI関連の株価やデータセンター需要が落ち、株価や景気に悪影響が出る、という非常に近視眼的なもののようです。正直、情けない理由だと思います。


02論点① 米中で「守る対象」が違う

AI規制の行方を考えるうえで、まず絶対に意識しなければならないのは、二大大国であるアメリカと中国で、規制の観点がまったく違うということです。

アメリカ側の観点からすれば、AIが悪い方向に活用された場合のリスクは大きい。だから安全が守られる規制をしなければならない、となります。このとき、AIのリスクから守る対象は社会、ソサエティです。西側の国はどこも同じ価値観で、日本で規制が必要だという場合も、社会への悪影響を防ぐという意味です。

ところが中国側では、AIの安全性を考える対象が社会ではありません。中国共産党です。共産党の支配体制に悪影響があってはまずい、という観点から必要なルールメイキングをする。西側とは出発点がまるで違います。だからこそ、グローバルな規制やガイドラインでの合意は難しいのです。

AIの安全性の対象が、社会ではなくて中国共産党なんです。


03中国がAIの開発競争を止めたくない理由

中国側の観点から言えば、AIに関する競争の抑制は絶対に困ります。中国はAIでアメリカに追いつき、自動車産業のようにできれば追い抜きたいと考えているからです。

その理由は、AIを世界に使わせることのメリットが大きいからです。AIを開発する段階では、世界をどう解釈するかをAIに教育する必要があります。アメリカ側の企業であれば、自由主義や人権、自由競争といった西側の価値観をベースに教育し、そこからAIが世界を解釈できるようにします。

一方、中国側のAIは当然、西側の価値観など教育しません。中国側の視点から世界はどう解釈できるのか、という教育をします。そうして作られたAIを世界中が使えば、出てくる結果は自ずと中国共産党的な価値観がベースになります。


04AIの輸出は「価値観の輸出」

中国からすれば、自動車を輸出しても売上市場が大きくなるだけです。しかしAIが世界中で使われれば、市場が大きくなって儲かるのに加えて、自国の価値観を輸出することにもなります。

だからこそ、中国はAIの開発競争が阻害されることを嫌います。アメリカとは立場がまったく違う。この点を忘れてはいけないと思います。


05論点② 米ソの核開発の協調とは本質的に違う

AIの技術にグローバルな規制が必要だという文脈で、冷戦期のアメリカとソ連による核技術をめぐる協調の仕方が参考になる、という議論があります。しかし、これは本質的にかなり違うと言わざるを得ません。

米ソ時代の核開発の競争抑制では、大事なのはアメリカとソ連の政府がどういう合意をするかでした。今回も、首脳会談での成果はなかったものの、ベッセント財務長官が閣僚級協議でAIに関する米中のホットラインを作ることを決めています。おそらく米ソ時代のアナロジーでしょう。ただ、本質的な意味はないと考えています。

核開発の時代は政府同士でよかった。しかしAIの開発競争を抑制しようとすれば、政府以外に民間企業が大きな役割を果たします。開発しているのは民間そのものだからです。


06シリコンバレーの企業も信用できない

そこで問題になるのが、企業の側です。中国側の企業が共産党直結で信用できないのはもちろんですが、アメリカ側の企業も信用できません。開発しているのはシリコンバレーの企業であり、彼らが国益を考えた行動を本当にするのかといえば、おそらくしないからです。

ソーシャルメディアや動画の普及状況を見てください。アメリカの社会にも世界中の社会にも明らかに悪影響があり、子どもがスマホ中毒になるといった問題が起きても、基本的に規制はしたがりません。逆にワシントンでロビイストに多額の資金を使い、なるべく規制が緩くなるように動いています。国益よりも自分の利益の最大化が完全に目的になっているのです。

いまAI開発を規制するルールが必要だと、シリコンバレーの企業のトップたちが語っています。しかしアメリカの識者のなかには、彼らの本音は全体の規制ではなく、自分のライバルの開発が抑制される方向で規制を入れたいだけだ、と指摘する人も少なくありません。


07正しい方向に進むのかを注視する

以上の2つの論点があるため、AIに関するグローバルな規制やガイドラインは、そうすぐには決まらないでしょう。しかし逆に言えば、1年経てばAIは今よりさらに凄まじい存在になっている可能性があります。

AIに関する規制のルールメイキングが早く進むこと、そしてそれが正しい方向に向かうのかどうか。しっかり注視していく必要があるのではないかと思います。

※内容は動画収録時点(2026年9月)の情報と説明に基づく見解です。最新の情報は各国政府・関係機関が公表する内容をご確認ください。

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今後ともよろしくお願いいたします。

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岸 博幸慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授/経済評論家・コメンテーター

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